相続の承認及び放棄
相続人は、相続開始の時から、被相続人に属した財産上の一切の権利義務(一身専属権を除く。)を継承することになります(民法896)。継承した財産に負債が多い場合など、一定の手続の下で相続人を救済する制度として、限定承認及び相続放棄が設けられています。
①限定承認
限定承認とは、相続財産をもって被相続人の債務を弁済した後、余りが出ればそれを相続する意思表示のことをいいます(民法922)。
- 相続の開始があったことを知った日から3か月以内に(民法915-1)
- 相続人が全員が共同で(民法913)
- 財産目録を作成し、これを被相続人及び相続人全員の戸籍謄本と共に「相続の限定承認の申述審判申立書」に添付して被相続人の住所地の家庭裁判所に提出すること(民法924)
以上の条件が必要です。
しかしながら
- 相続開始時に不動産を譲渡したものとみなされ、譲渡所得課税がされること
- 相続財産を競売に付さなければならない(民法932)など、資産の処分方法に制限があること
- 弁護士が代理人として手続に関与することが不可欠であるなど、手続が煩雑であること
以上の理由で現在ではあまり利用されていないとも言われています。
②相続放棄
相続の放棄とは、はじめから相続人にはならいことの意思表示をすることをいいます(民法939)
相続の放棄をするためには
- 相続の開始があったことを知った日から3か月以内に(民法915-1)
- 被相続人と相続の放棄をする者の戸籍謄本を「相続放棄申述書」に添付して被相続人の住所地の家庭裁判所に提出すること(民法938) 以上の条件が必要です。
③単純承認
相続人が法定の期限までに限定承認又は放棄をしなかった場合のほか、以下の場合には単純承認したものとみなされます(民法921)。
- 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
- 限定承認又は放棄をした後でも、相続人が相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき